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山 の い で 湯 守 っ て

 ずいぶん山の中で不便な思いもしました。冬は交通がと絶えたり食糧の確保すら難しい時代が長く続きました。いっそのこと山をおりてどこかで観光旅館でもと考えたこともしばしばでした。

 しかし、長年にわたってお訪ね下さるご常連のお客さまや、先祖が守ってきた温泉のことを思うと去ることも新築することにも頭をかかえました。“残してくれ”“古くさい建て直せ”そんなお客さんの声を自問自答しながら生きて参りました。

 私どもの宿では、草一本、石ころひとつにも皆さんとの血が通っているように思われてなりません。古いものや自然環境を残そうと、今日まで云うに云えない苦労も致しました。 おかげさまで、昨今はそれだから来たんだよとおっしゃるお客さまが多くなり、古さを守るという生き甲斐すら覚えるようになりました。有り難いことだと思っています。山合いの古いボロ屋ですが、昔ながらの木の湯にひたり、“宿の夫婦が摘んだ山菜の味でよい、炉ばたでおやじ語ろうよ”と、おっしゃる皆さんのためにいつ迄も生き続けたいと念願しております。

 雪どけの道をお帰りになったあのお客さん、無事に国道まで出られたかしら‥‥、そんなことを気にしながら今宵もまた訪ねて下さった都会の方々に山の暮らしのおしゃべりを続けて参ります。 

               日 本 秘 湯 を 守 る 会

                   会員旅館一同