温泉の医学的効果とその科学的根拠とは!? | 日本温泉協会

温泉の医学的効果とその科学的根拠とは!?

温泉の医学的効果とその科学的根拠とは!?

2021年1月28日 公開

 

2020年11月25日、千葉県鴨川市で開催された日本温泉科学会第73回大会で、前田眞治教授が「温泉の医学的効果とその科学的根拠」と題して公開講演された内容をご紹介します。

1. 温泉療法

 温泉療法は狭義の温泉療法として①温熱作用、②浮力・水圧・粘性抵抗のような物理作用、③含有物質による化学・薬理作用、④飲むことによる飲泉のような直接作用と刺激に対する生体反応効果などの間接作用がある。さらに海洋・森林・地形などの環境による要因や病院や施設で行われる運動・食事・物理療法などが複合的に加わり、広義の温泉療法を形成する。
 昔から温泉には、体を休める「休養」・健康を保つ「保養」・病気を治療する「療養」という「3つの養」があるといわれている。(下図)

 温泉=温水+化学物質+環境要因

 温水としては「熱エネルギーをもつ水」というようにもとらえることができ、温泉のもつ温熱効果、静水圧、浮力、粘性抵抗などの効果をもたらす。

2. 温熱効果

 温泉の直接作用の一つに温熱効果があり、これが、温泉の一般的適応症につながる。
 ①体温上昇効果:温泉はすぐに温まる。
 ②保温効果:なかなか冷めない。

 下のグラフは塩化ナトリウム温水(食塩泉)、炭酸ナトリウム温水(重曹泉)、二酸化炭素温水(炭酸泉)の入浴前後の体温の変化を水道水に比較してみたものであるが、41℃15分の全身浴で水道水が入浴前より1.0℃上がるのに比べ、いずれも体温は1.5℃程度にまで速く上がりすぐに温まり、出浴後も体温が高くいつまでもポカポカしている。

 温熱効果には以下➊~➎のようなものがある。

➊疼痛緩和
 
疼痛緩和作用の一つに痛みを感じる神経のうち、細いC線維の、痛みを感じる閾値が上昇し痛みを感じなくなる。温泉水ではこの作用が顕著である。循環改善に伴い痛みを出す物質(発痛物質)が除去されても痛みが和らぐ(疼痛・発痛物質の除去)

➋筋・関節拘縮の改善
 
筋腱軟部組織柔軟化、筋肉を突っ張らせるような神経も抑えられ、筋肉の緊張が落ちる。腰痛、肩こり、五十肩などに効果がある。

➌血行促進効果
 
筋肉疲労回復、皮膚疾患改善などにも効果をもたらす。人間の体に熱が伝わると、どうなるのか?そこで湯に浸かったときの身体の反応を解説する。

 人体内部の酵素活動をはじめとする人間の生命活動を維持するために、常に体温を一定にしようと働いている。酵素は36~37℃程度の体温で最も効率よく働くことができる。そこに外部から熱を与えると、酵素などが働かなくなりエネルギーやタンパク質などが作られなくなる。そのような体温上昇をさせないように、その熱を他の場所に移動して体温を下げることで、その恒常性を保持するのが正常な生理活動である。

 入浴などで、外から熱を与えると、皮膚近辺の皮膚の温度が上がり酵素がうまく働かなくなり、細胞・組織が効率的に活動できなくなる。そこで、その熱をいち早く他の場所に移動する必要があるため、まだ温まっていない他の場所にある血液をその温まった場所に循環させ、その場所で熱をもらって温まった血液を他の場所に熱を運び、汗や呼気の中に過剰な熱を運び分散する。この現象によって熱を受けた場所の血液循環がよくなる。

 血液循環が良くなるということは、その場所の老廃物などが洗い流され、結果的にその組織がリフレッシュされることにつながる。

血行促進効果:
①血流増加・血管拡張をうながし、②鎮痛効果、代謝の促進をはかる、③疲れを取り(疲労回復)、④痛んだ組織を修復する(修復するための栄養や酸素などが運ばれてくる:きりきずなどを治す)。

主な利用法
疼痛性疾患:関節リウマチ・変形性関節症などの関節痛、腰・肩・四肢の筋肉痛改善
関節拘縮:脳卒中・神経疾患・運動器疾患に伴う関節拘縮、動かさないことによる関節拘縮の改善
血流不全:末梢循環障害の血行改善。ケガ・床ずれ・火傷などの皮膚再生治癒促進
筋緊張亢進状態(痙縮):脳卒中・各種神経疾患による筋緊張亢進(痙縮:突っ張り)の改善
血管運動性神経の障害:手の浮腫・関節周囲発赤などを伴う肩手症候群の改善

➍免疫力増強作用
 人は熱を受けると、一定の体温を保つ機能のために元の体温にもどろうとする。熱が高すぎて強すぎる刺激だと、細胞や組織がこわれる。→やけどや異常な反応が生じる。
 適度な刺激だと→細胞・組織はこわれずに、次回刺激が来ても大丈夫なようにかまえることができる。→刺激や外敵から自分を守る機能が出現する→その一つに免疫力を高めたり、生体防御能力を高めることで備える。そのため、免疫と組織修復能力が高まる。
 免疫の代表→NK細胞活性で免疫機能をみることができる:NK細胞は主に血液中に存在し、リンパ球に含まれる免疫細胞の一つで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えているため「ナチュラルキラー(NK)細胞」と呼ばれている。

 NK細胞は自らの体内を幅広く行動し、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などの異常細胞を発見すると攻撃を仕掛ける。NK細胞活性が強いと、抵抗力が強い状態となる。NK細胞活性は、この免疫監視機構にも関与している。NK細胞活性は入浴熱刺激後1~2日上昇する。

 

➎タンパク修復機能
 組織修復力を改善する代表にHSP70(ヒートショックプロティン70)がある。細胞が損傷されても新しいタンパクが作られリフレッシュする。こんな働きが温泉にある。

 ①HSP70 とは
 HSPは、平常状態の細胞内に広く分布する蛋白質である。温熱、虚血、感染、放射線等の種々のストレスによっても誘導され、蛋白の変性を抑制するとともに、変性した蛋白の修復を行うことが知られている。
 中でも分子量70キロダルトン(kDa)のHSP70は、新たに合成されたアミノ酸複合体の折れたたみ、タンパク質の輸送と品質管理、不要になったタンパク質の分解など、タンパク質の一生にわたり面倒をみつづけているストレスタンパクの一種である。

 ②温浴を行ったときのHSP70 の変化は?
 最近、HSP70は温熱刺激後に種々のタンパクを修復することで、 疲労後のリフレッシュや健康増進の一翼を担っているものとして注目されてきている。
 このタンパクは温熱刺激によって誘導されることが知られており、温熱効果の高い入浴で産生されれば、入浴が健康増進にも貢献することができると考えられる。
 温泉の入浴でもHSP70が上昇することが確認され、水道水入浴よりさらに上昇する。

3. 浮力・水圧・粘性抵抗

 温泉の直接作用には、他に浮力・水圧・粘性抵抗がある。
 水圧(静水圧):深さ1cm、体表面積 1cm2あたり 1g で首から下の体表面積 1.4m2、座位で平均深さ 25cm の浴槽に入浴したとすると、14,000cm2×25g/cm2=350,000g=350kgという大きな圧力が身体にかかることになる。この水圧を利用してマッサージ効果や抵抗、むくみの改善などに利用できる。

4. 含有成分の化学・薬理効果(入浴)

 温泉は種々の化学成分を多く含む点で家庭風呂と異なる。含有成分は飲用によって最も多く吸収されるが、少量は経皮的にも吸収される。また皮膚に接触しても作用を現わす。
①重曹(炭酸水素ナトリウム)、食塩(塩化ナトリウム)成分などによる保温・温熱作用の持続→温熱作用の長期持続効果(除痛時間が長い)
②二酸化炭素や硫化水素による血管拡張作用:末梢血液循環の改善(冷え性などの改善)、軽度の高血圧患者の降圧作用、体温上昇が短時問で可能、温熱効果の早期発現と持続効果がある。
③酸性泉だけでも殺菌効果があるが、マンガン(Mn)・ヨード(I)含有泉は殺菌効果が強い;にきび、アトピー性皮膚炎
 入浴による殺菌効果は、皮膚表面で細菌などが増殖して皮膚症状を悪化させるような、細菌性皮膚疾患、真菌性皮膚疾患などに効果を表す。アトピー性皮膚炎などは、皮膚の表面でブドウ球菌などが増殖し、その部位で炎症を起こし、かゆみや湿疹を生じる。皮膚表面を殺菌することで効果を生じる。
④アルカリ性泉:アルカリ性泉の効果はセッケンの作用と同じで皮膚表面の角質や皮脂をはがして溶かし込んでしまい、そのぶん皮膚がツルツルに滑らかに感じることができる、いわゆる美肌の湯の効果である。ただし強いアルカリ性泉の場合は皮膚をはがし過ぎ肌荒れするので注意が必要である。弱アルカリといわれるpH7.5~8.5程度が最適である。

5. 飲泉の効果

 飲泉は化学的物質が入った温水と同じで、薬を服用するのと同じ

泉質名 適応症
 ① 炭酸水素塩泉  重曹のアルカリの効果で胃酸を中和し、胃十二指腸潰瘍などに効果がある。
 ② 二酸化炭素泉  二酸化炭素の血管拡張作用で胃の血管が拡張し、胃腸の動き(ぜん動運動)が活発になる。胃腸機能低下、食欲増進などに効果がある。
 ③ 含鉄泉 鉄が含まれていればそのぶん、鉄欠乏性貧血に効果がある。
6. 心のリラックス効果

 1 回の入浴でもリラックスする。リラックスすると低下する唾液腺のクロモグラニンでリラックス度をみてみると、家庭用浴槽の水道水でもリラックスするが、温泉ではさらに低下し、1回の入浴でも効果がある。

7. 温泉地環境作用(気候療法など)
① 海洋気候 海岸の近くでは気温の上下の変化が小さく身体には温和な作用をもたらす。海岸療法(タラソセラピー)
② 森林気候 木々から出る芳香物質(フィトンチッド)による森林浴ができる。
③ 高地気候 海抜の高い土地では逆に気温や気圧が低く刺激的な環境による地形療法ができる。
8. 浴用の一般的適応症(療養泉であれば効果が期待できるもの)

 主に温熱効果
① 筋肉、関節の慢性的な痛み、こわばり(関節痛、腰痛症など)
② 運動麻痺による筋肉のこわばり
③ 冷え性、末梢循環障害
④ 胃腸機能の低下(胃がもたれる、ガスがたまるなど)
⑤ 軽症高血圧
⑥ 耐糖能異常(糖尿病)
⑦ 軽い脂質異常症
⑧ 軽い喘息・肺気腫
⑨ 痔の痛み
⑩ 自律神経不安定症やストレスによる諸症状(睡眠障害など)
⑪ 病後回復期
⑫ 疲労回復、健康増進(生活習慣病改善など)

9. 浴用の泉質別適応症
泉質名 適応症
 ① 単純温泉 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
 ② 塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉  きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
 ③ 二酸化炭素泉 きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
 ④ 硫黄泉 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型は末梢循環障害を加える)
 ⑤ 酸性泉 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
 ⑥ 放射能泉 高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

◎プロフィール
前田眞治(まえだ まさはる)
一般社団法人日本温泉協会副会長・学術部委員長、医学博士、国際医療福祉大学大学院教授、日本温泉科学会会長、温泉療法専門医。著書「温泉の最新健康学」(悠飛社)、「炭酸パワーで健康になる!」(洋泉社)など。

 

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