温泉分析書の見方 | 日本温泉協会

温泉分析書の見方

温泉分析書の見方

2020年6月19日 公開

温泉分析書の見方

 温泉施設には、見本のような温泉分析書が掲示されいる場合が多いと思います。これには温泉の湧出地、泉温、湧出量、成分、泉質、禁忌症と適応症、利用上の注意事項など、その温泉を知るための情報が記載されています。しかし分析書の内容は調査時点での測定値であって、常にこの値であることを証明したものではありません。

 温泉分析書は「温泉分析書(本表)」と「温泉分析書別表」の二本立てになっていますがここでは本表について解説しています。
 温泉分析書(見本)[PDF:124KB]

1.分析申請者
 温泉分析を依頼した申請者の住所と氏名が記載されています。
 温泉分析書は権利関係を証明する書類ではありませんが、その温泉の所有権者、利用権者といった場合もあります。

2.源泉名及び湧出地
 
源泉とは温泉が湧き出す源(井戸)を指し、通常は名前がついています。
 例えば「1号泉」、「2号泉」、「薬師の湯」、「鷹の湯」といった名称など様々ですが、申請者が申し出た名称が記載されています。

3.湧出地における調査及び試験成績
(1)調査及び試験者
 現地試験をおこなった機関の名称と試験者の氏名が記載されています。
(2)調査及び試験年月日
 現地試験をおこなった年月日が記載されています。
(3)泉温
 
源泉から地上に湧出または汲み上げられた温泉の温度が記載されています。あわせて測定時の気温が記載されています。
 源泉がコンクリートなどで構造上ふさがっている場合や、地形上立ち入りが困難な場合は、湧出口から一番近い測定できる場所で測定がおこなわれます。
 温泉法では、温度の規定で25℃以上あれば温泉と認められますが、25℃未満でも成分の規定を満たせば温泉と認められます。また温泉は温度により次の通り分類されています。

冷鉱泉 25℃未満
温泉 低温泉 25℃以上~34℃未満
温 泉 34℃以上~42℃未満
高温泉 42℃以上

(4)湧出量
 
現地で試験者によって測定された湧出量(または汲み上げ量)が毎分何リットル(ℓ/分)という単位で記載されています。「自然湧出」、「自噴」、「掘削・動力揚湯」のように湧出状態が記載されている場合もあります。かつて毎分1ℓの温泉で入浴客1人、湧出量50ℓなら宿泊定員50人の旅館ができるともいわれていました。温泉分析書の注目ポイントの一つです。

(5)知覚的試験
 
温泉水の色、清濁、味、臭いについて、現地で試験者がおこなった試験結果が、微弱、弱、強といった度合いとともに記載されています。道具や試薬を使わず人間の目、舌、鼻という知覚で試された結果で、その温泉の特徴を簡潔に表しています。以下は一例です。

 色  無色、黄色、黄褐色、淡黄色、など
 清 濁  澄明、蛋白石濁、微混濁、など
 味  無味、酸味、炭酸味、収斂味、から味、塩味、苦味、など
 臭 い  無臭、泥炭臭、腐臭、硫化水素臭、亜硫酸臭、石油臭、よう素臭、鉱物油臭、木材臭、など
その他 ガス発生、沈析物の有無、など

 組み合わせにより「無色澄明無味無臭」、「淡黄色澄明強鹹味僅微鉱物油臭」といった具合になります。

(6)pH値(水素イオン濃度指数)
 温泉水の液性(酸性、中性、アルカリ性)がpH値(水素イオン濃度指数)によって記されています。一般的にpH7が中性とされていますが、温泉の場合はpH6以上から7.5未満の範囲を中性とし、これより数値が小さいほど酸性が強く、大きいほどアルカリ性が強くなります。入浴時の感触や肌触りにも関係するので注目ポイントの一つです。
 代表的なものとして、酸性では秋田県の玉川温泉がpH1.2、アルカリ性では長野県の白馬八方温泉がpH11.3として知られています。

酸 性 pH3未満
弱酸性 pH3以上~6未満
中 性 pH6以上~7.5未満
弱アルカリ性 pH7.5以上~8.5未満
アルカリ性 pH8.5以上

(7)ラドン(Rn)
 
ラドンとは、ラジウム(銀白色の金属物質)の壊変で生じた気体です。あらゆる天然水に微量に含まれているといわれています。温泉中のラドンの量を表わす単位としてはキュリー単位(Ci)と、マッヘ単位(M.E.)が使われています。
 ラドンが温泉水1kg中に30×10-10キュリー以上、または111べクレル以上、8.25マッヘ単位以上含有すると、療養泉として「放射能泉」に該当しますが、一般の温泉水にはごく微量しか含まれていないため記載が省略されている場合もあります。

4.試験室における試験成績
 
温泉分析は、湧出地(現地)で行われるほか、温泉水を試験室に持ち帰り定められた方法で化学分析が行われます。
(1)試験者
 
試験室で試験をおこなった機関の名称と試験者の氏名が記載されています。
(2)分析終了年月日
 温泉水を試験室に持ち帰り、必要な化学分析がすべて終了した年月日が記載されています。
(3)知覚的試験
 試験室に持ち帰った温泉水の色、清濁、味、臭いが記載されています。
 湧出地における知覚的試験と比較すると、温泉が湧出した直後と時間が経過してからの変化を知ることができます。例えば鉄分を含有する温泉では、湧出地での記載が「無色澄明」であったものが、試験室では「黄褐色の懸濁物があり・・・」といったように変化します。
(4)密度
 
試験室に持ち帰った温泉水の水温20℃における1cm3あたりの質量で表わされています。
 二酸化炭素(炭素ガス)などをある程度以上含有する場合は1より小さくなり、また塩分が濃厚なときは1より大きくなります。
(5)pH値(水素イオン濃度指数)
 
試験室にもち帰った温泉水のpH値が記載されています。
 湧出地のpH値と異なる場合が多く、例えばアルカリ性単純温泉などは、湧出地での測定値がpH10あったものが、試験室で測定するとpH8になることがあります。これは空気中の二酸化炭素(弱い酸性物質)を吸収して、アルカリ性が中和されたと考えられています。また逆に二酸化炭素を含む場合は揮散してpH値が上昇することもあります。硫化水素を含む温泉の場合は酸化によって硫酸イオンに変化するためpH値が変わることがあります。
(6)蒸発残留物
 
温泉水1kgを加熱して煮つめ、水分を蒸発させたときに残った固形物の質量が記載されています。加熱蒸発させたときの温度も併記されています。
 ここに記されている分量だけが温泉水に溶けているというわけではありません。それは水だけが蒸発したわけでなく、溶けていた気体成分も揮散するし、熱のために分解して一部気体となって逃げ去るような成分(例えば炭酸水素イオン)もあります。また結晶水といって、溶解成分が固形物になるときに一緒にとり込まれる水もあるからです。

5.試料1kg中の成分、分量及び組成
 
温泉に含まれる成分が、(1)陽イオン、(2)陰イオン、(3)遊離成分、(4)その他微量成分に分けて記載されています。
(1)陽イオン、(2)陰イオン
 
陽イオン、陰イオンは、塩類(電解質)が水にとけたとき、水の作用でイオン(電気を帯びた粒子)としてバラバラに溶解してできたものです。プラスの電気を帯びているイオンを陽イオン、マイナスの電気を帯びているものを陰イオンといいます。

 陽イオンの例としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオンなどです。

 陰イオンの例としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫化水素イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオンなどです。

 イオンは、電気量が1単位帯びているとき1価のイオン、 2単位なら2価、 3単位なら3価のイオンといいます。

 また、陽イオン、陰イオンの欄は、「成分名」、「ミリグラム(mg)」、「ミリバル(mval)」、「ミリバル%(mval%)」で構成されています。

「ミリグラム」欄は、温泉1kg中に含まれているその成分の質量が記載されています。 1mgは百万分の1kgのことですので、この数字はp.p.mにほぼ一致します。

「ミリバル」とはイオンの電気量を表わす単位で、温泉1kg中に含まれているイオン当量数をバル(val)といい、その千分の1の単位ミリバル(mval)が使用されています。このミリバルは温泉成分の組成を表わすためだけに使われている特殊な表現です。
 計算式は ミリバル = 温泉1kg中に含まれる成分量(mg) ÷ 原子量(または分子量) × イオン価数

 例えば温泉分析書(見本)の場合、ナトリウムイオン95.5mgを、ナトリウムの原子量22.99で割り、イオン価数1を乗じると4.15mvalとなります。

 ミリグラムの欄では、温泉中に含まれる成分の重さが記載されていますが、成分の元素の重さは、重いものも軽いものもあり、例えばゴルフボール100kgとか、テニスボール100kgと言っても、何個ずつあるかがわからないのと同じで、ミリグラムだけでは、それらの成分がイオンとしての電気素量の数でどのぐらいの数になっているのかがわかりません。そこでイオンの場合は電気量を表わすミリバルという欄が設けられています。

 また、温泉のような、いわゆる電解質と呼ばれるものの水溶液には「電気的中性の原則」というものがあり、陽イオン全体の帯びているプラスの電気量と、陰イオン全体のマイナスの電気量が同じになるため、陽イオン、陰イオンのミリバルの合計値は同一になります。異なる場合は分析誤差や未測定の成分があると考えられていれます。

「ミリバル%」欄は、陽イオン、陰イオンそれぞれの合計に対する比率を表わしたもので、これが「泉質」をきめる基本になります。ミリバル%が最大のものがその温泉の主成分で、次いで20%以上のものが副成分となります。

(3)遊離成分
 
遊離成分とは、溶存物質のうち、イオンとならずに分子の形で溶解しているものをいいます。もともと固体のものと、気体のものとがあり、分けて表にしてあります。
 これらの物質は、酸性の強さ、アルカリ性の強さによってはイオンになるものがあります。例えば二酸化炭素(CO2) はアルカリ性のときにイオンとなり、酸性または中性で分子の形のまま溶けていると考えられています。 
 この遊離成分の表は、1kg中に含有されるそれぞれの成分の「ミリグラム」の枠と「ミリモル」の枠から出来ています。ミリグラム枠の数字を分子量で割り算をすればミリモル(mmol)枠の数字になり、この数字は温泉に溶けているそれぞれの成分の分子の個数の相対的な大きさを表しています。
 遊離成分は、そもそも固体の物質が分子の形でとけているとき、非解離成分として表示され、陽イオンの量と、陰イオンの量と、さらにこの非解離成分の量との総合計が、「溶存物質計(ガス性のものを除く)」として記載されています。この数値が、温泉法に定められている法第2条別表中の「含有量1kg中の溶存物質(ガス性のものを除く)・・・・」にあたる数値となります。
 溶存ガス成分の表の下には「成分総計」の記載があります。これが実際に温泉中に溶解しているものの総量となります。

(4)その他微量成分(mg)
 
鉱泉分析法で、分析すべき成分項目中、含有量が、温泉1kg中、 0.1ミリグラム以下のものが記載してあります。一般には、ひ素、銅、鉛、水銀などの重金属が中心に記載されていて、例えば、人体に有害とされている水銀などの場合には、「総水銀 検出せず」などと、調べて見たけれども測定限界値以下なので測れなかったことを特に記載する場合もあります。

6.泉質
 
分析結果にもとづいて「療養泉」に該当する場合は泉質名がつきます。(療養泉の説明はこちらをご参照ください。) 泉質は10種類(単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉)に分類されています。(泉質の説明はこちらをご覧ください)
 なお、温泉法上の温泉であっても「療養泉」に該当しない場合は泉質名がつきません。その場合は項目名は「6.泉質」が「6.判定」となり「温泉法第2条の別表に規定する○○の項により温泉に適合する」といった記載になります。
 また、泉質名の後に「低張性・アルカリ性・低温泉」などのように、浸透圧の分類、液性の分類、温度の分類が併記されるのが通例となっています。

 浸透圧とは、濃度が異なる水溶液の間に生じる圧力の差で、温泉の場合は溶存物質の量(濃度)または凝固点(氷になる温度)によって、下表のとおり低張性、等張性、高張性に分類されています。人間の体液(生理食塩水)の濃さは約8,800mg/kgで等張性となります。

 簡単にいうと「低張性」とは体液よりも濃度が低い温泉、「等張性」は体液と濃度が等しい温泉、「高張性」とは体液よりも濃度が濃い温泉ということになります。身体への作用として、高張性の温泉に入ると体内の水分が体外へと出ていきやすい(脱水症状を起こしやすい)、逆に低張性の温泉に入ると、身体は水分を吸収しやすい(身体がふやけやすい)と考えられますが、実際は身体の皮膚表面は細胞壁で守られているため、浸透圧によって温泉水が体内に吸収されたり、体液が出ていく心配ありません。

浸透圧 温泉水1kg中の溶存物質量 凝固点
低張性 8,000mg/kg未満 -0.55℃以上
等張性 8,000mg/kg以上~10,000mg/kg未満 -0.55℃未満~-0.58℃以上
高張性 10,000mg/kg以上 -0.58℃未満


温泉分析書の見方についての説明は以上となりますが、さらに詳しくお読みになりたい方は、以下の図書をご参照ください。
♦参考図書
「日本温泉名人認定試験 温泉検定テキスト」令和元年6月発行 一般社団法人日本温泉協会
「温泉 歴史と未来」平成19年2月発行 社団法人日本温泉協会

温泉分析書のQ&A

Q 温泉分析書は何のためにあるのでしょうか?
A 温泉利用事業者は、都道府県知事から「温泉の利用の許可」を受けなければなりません(温泉法第15条)。また施設内の見やすい場所に温泉の成分、禁忌症、入浴または飲用上の注意事項を掲示する必要があります(同法第18条)。これらの許可手続きに「温泉分析書」が必要となっています。通常、施設で目にするものは「掲示証」と呼ばれています。

Q 温泉分析書に有効期限はあるのでしょうか?
A 温泉利用者の信頼の確保の観点などから、温泉分析は10年ごとに再分析が必要となっています(同法第18条)。なお大昔の温泉分析書も、最新の温泉分析書と誤解を招かない工夫がされている場合には展示しても差し支えありません。

Q 温泉分析はどのような方法でおこなわれているのでしょうか?
A 原則として環境省が定めた鉱泉分析法指針にもとづいておこなわれています。検体水が温泉であるか否かを推定したり、泉質名の推定、泉質の経年変化を知る目的でおこなわれる「鉱泉小分析法」と、温泉法にもとづく公共の浴用・飲用に供する場合に必要な「鉱泉分析試験法」が定められています。

Q 温泉分析はどこへ依頼したら良いのでしょうか?
A 温泉法にもとづき各都道府県に登録されている「登録分析機関」となります。
  ⇒登録分析機関一覧[PDF:318KB](環境省HP)
  また当協会姉妹法人の公益財団法人中央温泉研究所や下記の会員機関でも温泉分析をおこなっております。
  ⇒公益財団法人中央温泉研究所
  ⇒株式会社エオネックス
  ⇒株式会社東邦微生物病研究所
  ⇒公益財団法人山口県予防保健協会食品環境検査センター

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